休職中社員の副業や虚偽申告が疑われる場合の素行調査を解説します。
休職中社員の副業疑惑と調査
休職中の社員について、「療養を理由に休職しているにもかかわらず、別の会社で働いているのではないか」「SNSには旅行や副業と思われる投稿がある」といった疑念が生じることがあります。もっとも、休職中であっても、直ちにすべての活動が禁止されるわけではありません。病状、休職の理由、就業規則の定め、医師の指示、副業の内容や負担の程度などを総合的に確認する必要があります。
例えば、精神疾患や過重労働を理由とする休職中に、継続的な接客業・肉体労働・競合他社での勤務をしていた場合は、療養義務違反、虚偽申告、服務規律違反、競業避止義務違反などが問題となる可能性があります。一方、短時間の趣味活動や病状回復のための外出だけで、不正と断定することはできません。憶測だけで本人を追及すると、不要な労務紛争やプライバシー侵害につながるおそれがあります。
探偵・興信所による素行調査では、対象者の行動を適法な範囲で確認し、副業先への出入り、勤務の継続性、稼働時間、業務内容が推認できる状況などを記録します。調査報告書には日時・場所・行動経過・写真等を整理し、懲戒処分、休職継続の判断、復職可否の検討、弁護士への相談に活用できる客観資料としてまとめます。
ただし、調査は必要性・相当性を踏まえて実施しなければなりません。就業規則、休職規程、副業禁止・許可規程を事前に確認したうえで、疑惑の内容に見合った調査計画を立てることが重要です。
素行調査で確認できる事実
休職中の社員について副業や虚偽申告が疑われる場合、素行調査では「何をしていたか」を客観的な事実として確認します。具体的には、指定日に自宅から外出したか、どのような場所へ向かったか、特定の会社・店舗・事業所へ継続して出入りしているか、勤務とみられる時間帯に滞在しているか、業務に関係する服装・備品を使用しているかなどを記録します。単発の外出だけで結論づけず、複数日にわたる行動、出入りの頻度、滞在時間、曜日ごとの傾向を把握することが重要です。
また、SNS、求人情報、会社ホームページ、登記情報、公開されている広告・投稿等の適法な公開情報を確認することで、副業先と推測される事業者の実在、役職表示、営業実態、本人が公開している活動内容を整理できる場合があります。ただし、公開情報だけでは本人性や実際の勤務状況を断定できないため、現地での確認結果と照合する必要があります。
調査報告書には、撮影日時、場所、行動経過、対象者の特徴、写真・動画などを時系列で記載します。これにより、休職理由との整合性、就業規則上の副業禁止・競業避止義務への抵触可能性、診断書や申告内容との矛盾を社内で検討するための材料になります。もっとも、探偵の調査は病状の診断や不正の法的断定を行うものではありません。違法な尾行、住居侵入、盗聴、アカウントへの不正アクセスなどは行わず、適法な範囲で収集した証拠をもとに、会社が就業規則、本人への聴取、医師の意見、弁護士の助言を踏まえて対応を判断することが不可欠です。
証拠活用と適切な対応
休職中の副業や虚偽申告を裏付ける証拠を得た場合でも、直ちに懲戒処分や解雇を決めるのは適切ではありません。休職理由が私傷病である場合、就労不能とされた業務と副業の内容・負荷が同一とは限らず、軽作業や短時間の活動だけで休職事由の虚偽が確定するわけではないためです。勤務先は、調査報告書、撮影日時が確認できる写真・動画、公開SNSの保存記録、勤務実態を示す客観資料などを整理し、就業規則、休職規程、医師の診断内容、本人の説明と照合する必要があります。
対応時には、本人に証拠をすべて示す前に、事実確認の機会を設け、休職中の行動、副業の開始時期、業務内容、収入、療養状況について具体的に聴取します。その際、誘導的な質問や威圧的な追及は避け、聴取記録を作成することが重要です。副業禁止規定違反、療養義務違反、虚偽申告、会社への背信行為などが認められる場合は、注意指導、休職の見直し、減給・出勤停止等の懲戒を検討します。ただし、処分の重さは行為の悪質性、継続性、会社への影響、過去の処分例との均衡を踏まえて判断します。
不適切な調査や証拠収集は、プライバシー侵害や紛争を招くおそれがあります。違法・過度な監視を避け、調査の必要性と相当性を確保したうえで、必要に応じて弁護士、社会保険労務士、探偵・興信所と連携し、再発防止策まで含めた慎重な対応を進めることが重要です。