サプライチェーンに潜む人権リスクを調査し、適切な対策へつなげます。
人権リスクの把握と調査
サプライチェーン人権デューデリジェンスでは、自社だけでなく、原材料の調達先、製造委託先、物流事業者、販売代理店などを含めた取引網全体に目を向ける必要があります。特に、強制労働、児童労働、長時間労働、賃金未払い、差別、ハラスメント、労働安全衛生上の問題、外国人労働者の不適切な受入れといったリスクは、取引先のさらに先にある二次・三次サプライヤーで生じていることも少なくありません。
調査の第一歩は、取引先の所在国・地域、業種、雇用形態、調達品目、過去の行政処分や報道、労務トラブルの有無などを整理し、リスクの高い領域を特定することです。その上で、登記情報、公開情報、訴訟・報道記録、SNSや口コミ、反社会的勢力に関する情報、現地の実態に関するヒアリングなどを組み合わせ、表面的な自己申告だけでは把握しにくい問題を検証します。
必要に応じて、従業員・元従業員・周辺関係者への慎重な聞き取りや、適法な範囲での現地確認を行い、事実関係を客観的に裏付けます。重要なのは、疑惑のみで取引先を断定せず、証拠の信頼性、情報源の利害関係、継続性を精査することです。調査結果は、リスクの内容、影響を受ける可能性のある人、発生可能性、緊急性を整理し、改善要請、取引条件の見直し、是正計画の策定といった適切な対応へつなげます。
取引先の実態確認と証拠収集
サプライチェーン上の人権デューデリジェンスでは、取引先が提出する自己申告書や誓約書だけで判断せず、実態を裏付ける確認と証拠収集が重要です。対象は一次取引先に限られず、原材料の調達先、製造委託先、派遣会社、物流事業者など、リスクが及び得る範囲へ段階的に広げます。具体的には、登記情報、許認可、制裁・行政処分歴、報道、訴訟情報、反社会的勢力との関係、採用・雇用管理体制、労働時間・賃金台帳、安全衛生記録、外国人労働者の受入状況等を確認します。
必要に応じて、現地確認、関係者へのヒアリング、公開情報調査、内部通報内容の検証を組み合わせ、強制労働、児童労働、ハラスメント、差別、不当な低賃金、危険な労働環境、旅券の取り上げなどの兆候を把握します。調査では、日時・場所・取得経緯を明確にした写真、記録、書面、音声等を整理し、改ざんや紛失を防ぐ形で保全します。匿名性が必要な通報者や従業員の保護にも十分配慮し、違法・過度な調査にならないよう法令と契約上の権限を確認することが不可欠です。客観的な証拠に基づき事実関係を整理することで、是正要求、取引条件の見直し、改善支援、契約解除といった適切な対応につなげられます。
是正措置と継続的な管理
人権デューデリジェンスは、リスクを発見して終わりではありません。調査によって強制労働、長時間労働、児童労働、差別、不適切な労働安全衛生、採用手数料の負担、下請先での不透明な雇用管理などが確認された場合、企業には影響の停止・防止・軽減に向けた是正措置が求められます。取引停止のみを直ちに選択すると、現場の労働者の雇用や生活を不安定にするおそれもあるため、違反の重大性、改善可能性、被害の継続性を踏まえた慎重な判断が必要です。
具体的には、是正計画書の提出、期限と責任者の設定、就業規則・契約書・勤怠記録等の見直し、労働者への直接ヒアリング、苦情処理窓口の整備、研修の実施などを求めます。改善状況は、自己申告だけで判断せず、再調査、現地確認、関連資料の照合、匿名性を確保した従業員聴取等により検証することが重要です。
また、取引開始時の審査だけでは新たなリスクを防げません。サプライヤーの所在国・業種・再委託構造・過去の指摘事項に応じて、定期的なモニタリングを実施し、リスク評価を更新します。調査記録、是正要求、改善確認の経緯を適切に保存することで、説明責任を果たすとともに、実効性ある人権管理体制の構築につながります。